研究本部長からの一言

研究本部長からの一言

6.「ヒト」にあって「カイコ」に無いもの

 カイコは這い回るヒトである」というのは言い過ぎでしょうか?ヒトにあってカイコに無いものを挙げるのは容易ではありません。カイコはいろいろな面で、ヒトと共通しているのです。ヒトだけにあるものとして「人間性」を挙げる方もおられるようですが、それは正しいでしょうか?

 生物学的見地から、ヒトにあってカイコに無いものをいくつか挙げてみましょう。カイコの血液は透明であり、赤血球がありません。カイコを含む無脊椎動物は、抗体の遺伝子をもっていません。したがってカイコには、抗原抗体反応に基づく免疫機構がありません。また、カイコにはヒトの骨にあたる組織がありません。したがって、骨粗鬆症のモデルを構築することはできません。このように、カイコに無くヒトにある臓器や組織を挙げることは、できないわけではありません。

 ヒトとカイコの共通点を挙げることは容易です。カイコにも、脳や神経系、筋肉があり、心臓、肝臓、腎臓、消化管に相当する臓器があります。したがって、ヒトが罹るいろいろな疾患のモデルをカイコで作出することが可能です。私たちは、病原菌やウイルスによる、カイコの感染モデルを構築しています。また最近では、糖尿病モデルや肝臓病モデルの研究に取組んでいます。原理的には、ほとんどの疾患モデルをカイコで作出することが可能であるはずです。カイコの疾患モデルは、治療効果のある新薬を創出する上で、極めて有用であると私は期待しています。

2011年7月14日

第1回 カイコシンの発見
第2回 ゲノム創薬の考え方に基づいた感染症治療薬の探索
第3回 体内動態指数
第4回 なぜカイコか?
第5回 効く薬と効かない薬
第6回 「ヒト」にあって「カイコ」に無いもの
第7回 カイコ創薬のすすめ
第8回 抗菌活性を有する薬剤の標的たんぱく質の同定方法