ゲノム創薬研究所 Genome Pharmaceuticals Institute

共同研究

株式会社マシスとの共同研究

(株)ゲノム創薬研究所では、株式会社マシスと共同で、
「カイコをテスターとする、農産物、食品、並びに環境の毒性・病原性試験法の開発」の具体的な事業化に向け共同研究を進めております。

  • 研究の目的

    農薬を含んだ輸入食材による中毒事件は、まだ記憶に新しいですが、今までもヒ素や有機水銀など、毒物によって農産物や食品、環境が汚染され、消費者の健康が損ねられるような事件は、多く発生しています。

    いずれの事件も中毒など人的な被害が発覚して初めて毒物の存在が明らかになるケースが大半であって、一般消費者や地域住民にとってみれば、それでは遅すぎます。また、毒物の検出にしても、これまでは個別の毒物に応じた物理化学的な手法(HPLC法やELISA法)が用いられて来ましたが、消費者にとっては、「毒物は何であるか」よりも「毒物が含まれていないか」が差し迫った問題と言えます。

    しかし全ての毒物について検出試験を実施することは不可能です。
    またマウスなど哺乳動物にて致死性試験を行うことは、コストが高い上に、動物愛護の観点より倫理的な問題が生じます。
    そこで、毒物の種類に依らず、毒性を検査できる迅速で費用の余りかからない方法の開発が望まれています。

  • 研究の方法

    弊社では、すでに下記表1の通り、カイコと哺乳動物において、毒物の体重あたりの致死量(LD50)が多くの化学物質について良く一致することを見出しております。

    また、下記図1、表2の通り、ヒトの病原性細菌はカイコを殺傷し、ヒトに対して病原性を持たない菌はカイコを殺傷せず、石油坑井水から分離した細菌の内、カイコ殺傷能の高い菌はマウスを殺傷することを見出しております。

    これらにより、カイコが食品などから毒物や病原性細菌を検出するテスターとして有用であることを確認することができました。
    目下、毒物、劇物あるいは病原性細菌、食中毒菌などで汚染されている物質に対する試験を繰り返しています。
    そして、「テスターとしてのカイコの利用」による食品の毒物や病原性細菌を検出する事業を(株)マシスと共同で開始することを目指しています。

表1「カイコと哺乳動物との毒物の致死量の比較」

毒物 LD50 (μg/g・animal)a

カイコ

哺乳動物(マウス/ラット)

エタノール 9500 10000
メタノール 2100 2130
DMSO 33000 11530
DMF 16000 2800
フェノール 310~3100 310
クレゾール 0.63 0.63
塩化ナトリウム 9100 4000
硫酸鉄 220 1500
硫酸銅 310 960
アジ化ナトリウム 380 45
青酸カリウム 115 8.7
  1. 投与した動物の半数が致死となる毒物の用量

表2「石油坑井水から分離された菌のカイコとマウスでの病原性」

菌株a

カイコ殺傷能b

マウス殺傷能c

#1
#2
#3
#5 ++
#6 ++ +++
#7 +++
#8d ++++ +++
#10
#13
黄色ブドウ球菌 S. aureus +++
大腸菌 E. coli
  1. rRNA遺伝子の塩基配列より決定
  2. 菌液1/1量 (+)、1/10量 (++)、1/100量 (+++)、1/1000量 (++++) で殺傷
  3. 菌液1/1量を接種した時の生存数2匹/3匹 (+)、1匹/3匹 (++)、0匹/3匹 (+++)
  4. 最近、アワビから発見された菌で、病原性は調べられていなかった。

図1「石油坑井水から分離されたカイコ殺傷能の高い菌はマウスをも殺傷する。」

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