株式会社ゲノム創薬研究所 代表取締役社長の安川喜久夫と申します。
皆さまは、数年前まで「感染症」と聞いて遠い昔のこと、或いは遥か遠く離れた地球のどこかのこととお考えになっていませんでしたか?
そんな思いを打ち砕いたのが、そう、あのCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)でした。
COVID-19のみならず、今も全世界で感染症により数多くの命が奪われています。
感染症に効く薬の開発は人類の健康を守るため必須の要件ですが、一方、ヒトと菌(或いはウィルス)の長い戦いの中で薬剤耐性菌の存在も大きな脅威となっています。
この問題に適切な対応が取られないと、2050年には年間の死者が世界で1千万人に達するという試算もあるそうです。
それに打ち克つ可能性を秘めた薬剤の有力な候補が、当社が物質特許を保有する「ライソシンE」で、当社の研究本部長を務める関水和久教授が確立した、世界でも唯一無二の「カイコを用いた薬剤のスクリーニング法」により見出されました。
次に、話題を皆さまにとりましてもっと身近な方に移しますと、今や世を挙げての健康食品ブーム。
きっと皆さまも日頃口にされたり、ご興味・ご関心を持っておられるのでないかと思います。
私たちはこの分野では「免疫」をキーワードに、やはり「カイコ」を使って、例えば乳業メーカーさんとの共同研究により自然免疫活性の高い乳酸菌を天然物から分離して特許化。
更にそれをヨーグルトとして商品化して消費者の皆さまにお届けしています。
ここでご注目頂きたいのが、免疫活性が高いとか低いとか、それをどのように評価するかという点です。
私たちはその度合いをカイコで客観的に定量化する手法を開発しました。
この方法を用いれば、乳酸菌に限らず様々な食品素材の中から自然免疫賦活能に秀でたものを探索し、客観的な評価することができます。
また、カイコと哺乳動物で薬物の体内動態が共通している点を利用して、化学物質の毒性試験を動物福祉に配慮する立場から、先ずカイコで実施することが可能です。
ヒトの体内に入る食品は元より、肌に使用する化粧品などヒトの健康保持に関わりをお持ちのメーカーさんのコンタクト・ご用命をお待ちしております。
私たちはこれからも関水教授の「研究の成果を社会のお役に立てたい」という創業の精神を忘れず、人々の健康増進のために貢献してまいります。
私たちゲノム創薬研究所は、当社顧問であり研究本部長を務める関水和久(現・帝京大学薬学部特任教授)が、東京大学大学院薬学系研究科教授時代に大学での研究成果を広く社会に還元したいという想いで設立した、新しい産学共同研究モデルによるベンチャー企業です。
これまでの関水教授の研究の中で、私たちは人類に有用な新規物質を探索するため、「カイコ」をモデル動物として用い、効率的且つ安価に、また動物福祉にも配慮したユニークなスクリーニング法を確立しました。
この手法により、創薬に向けて現在開発中の新規構造・新規作用機序を有する革新的な抗菌剤シーズ(ライソシンE)の発見を始めとして、乳酸菌などで自然免疫賦活能が高いものを選抜して乳業メーカーさんや健康食品メーカーさんに提供し高いご評価を頂くなど、着実に成果が上がっております。
これからも私たちは、関水教授の「全世界の人々に健康を届けたい」という信念を共有し、これを具現化すべく役職員一同全力で挑戦し続けてまいります。
株式会社ゲノム創薬研究所
〒113-0033
東京都文京区本郷3-4-5ハイムお茶の水2階D室
〒277-0882
千葉県柏市柏の葉5-4-19 東大柏ベンチャープラザ 201B
平成12年(2000年)12月21日
7397万円
ゲノム創薬研究所有限会社として設立(設立理念PDFファイル参照)
大手製薬会社と共同研究契約を締結し事業開始
エヌ・アイ・エフ ベンチャーズ株式会社(含む関連組合)が出資引受
千代田区外神田にウエットラボ開設
株式会社に改組し、社名を株式会社ゲノム創薬研究所に変更
独)医薬基盤研究所の基礎研究事業に研究実施機関として参加
(研究プロジェクト名:カイコ幼虫感染症モデルを用いた、バイオアッセイによる感染症治療薬シーズの開発)
東京大学の本郷キャンパス(アントレプレナープラザ)にウエットラボ移転
独)科学技術振興機構の産学共同シーズイノベーション化事業顕在化ステージに当社課題が選定される。
研究課題名:カイコをテスターとする、農産物、食品、並びに環境の毒性・病原性試験法の開発
独)科学技術振興機構の研究成果最適支援プログラム(A-STEP)に当社課題が選定される。
研究課題名:新規環状ペプチド化合物の毒性、メカニズム解析
東大柏ベンチャープラザにウェットラボ移転。
当社と東京大学が開発し、次世代抗生物質として期待される「ライソシン開発プロジェクト」への助成事業が
独)科学技術振興機構から日本医療研究開発機構(AMED)に引継がれる。
ちば中小企業元気づくり助成事業に選定される。
助成事業名:カイコ遅発筋収縮法を活用した自然免疫活性化効果の期待される成分の抽出及び抽出成分の生産方法の確立。
経済産業省平成30年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に選定される。
計画名:「カイコによる機能性スクリーニング技術を用いた健康食品の効率的開発方法の確立」
日本コカ・コーラ社が11/19-B1乳酸菌を使用した新商品の販売を開始した。
ゲノム創薬研究所は、カイコを疾患モデル動物として使い、食品を含めた天然物から医薬品資源を探索する研究を行っています。
医薬品の探索においては最初に試験管内での評価系を用いた探索が行われます。しかしながら、見い出される候補化合物の殆どは動物試験では治療効果を示さないという問題があります。これは化合物の体内動態に起因する問題です。動物体内には外来化合物を排除する仕組みが働き、治療効果が見られないのです。
化合物の体内動態を知るために、従来の探索ではマウスやラットなどの哺乳動物が使われてきました。しかしながらこれらの哺乳動物を医薬品開発の探索段階で用いることは、多大な費用が必要であるばかりでなく、動物愛護の観点からの問題がありました。私たちは昆虫のカイコを用いることによりこの問題を解決しようと試みています。
カイコは長い養蚕業の歴史の中で飼育法が確立されてきたいわば家畜とも言うべき動物です。私たちは、カイコにおける薬物の体内動態が驚くほどヒトを含めた哺乳動物と共通していることを明らかにしてきました。この科学的知見を基盤としてカイコを用いることにより、安いコストでかつ動物愛護の観点にも配慮して動物実験を行うことが可能となります。
現在、ゲノム創薬研究所は「ライソシンE」という抗MRSA感染治療薬の開発を行っています。MRSAは多剤耐性の黄色ブドウ球菌で、この克服は人類の健康維持に貢献する最重要課題の一つです。このライソシンEは、私たちが開発したカイコを用いた抗菌薬のスクリーニング方法を利用して発見されました。
日本中の土壌から抗生物質生産菌を集め、その中からカイコの系で治療効果を示す画分を得てその構造を決定した結果、新規抗生物質であることが分かったのです。ライソシンEは黄色ブドウ球菌の膜上に存在するメナキノンという物質に結合し、菌の膜を破壊することが分かりました。そのためライソシンEはこれまで医療に使われてきた抗MRSA薬に比べて極めて強力な殺菌活性を示します。
抗生物質の殺菌力は実際の医療において重要であり、これまでは治療困難であった難治性MRSA感染症に対してライソシンEが有効であることが期待されます。ライソシンEが実用化されれば、1996年のファイザー社のザイボックス以来の新規機序を有する抗生物質となります。
ライソシンEの治療薬としての開発に成功することは、大学での研究成果を社会還元するという会社設立の目標に適うものであり、是非とも成功させたいと思っています。
私自身は現在も大学の研究室で毎日自分の手で実験をしています。最近では、カイコのサイトカインストームモデルを構築し、そのメカニズム解析、並びにこの系を利用した過剰免疫治療薬の発見にチャレンジしています。
目標の達成には多くの方々の協力が必要です。引き続きよろしくご支援賜りますようお願い申し上げます。
わたしたちはカイコをテスターとして採用し、様々な病態モデルの確立を行っています。
創薬の研究や感染症治療の新たな道筋として、最適なご提案をさせていただきます。