お知らせ

開発研究技術の紹介


カイコの血糖値を制御する技術
(首題技術について、東京大学との共同研究の成果として論文が米国の有力な学術誌PLoS ONEに掲載され、
さらに国内の新聞でも報道されました。)

技術・論文の内容


 

東京大薬学系研究科の関水和久教授は、カイコ幼虫に腸内注射をする方法と体液に注射する方法を説明し、「こんな使い分けが、ショウジョウバエでできますか?」と言う。ショウジョウバエは昆虫では最も代表的な実験動物だが、体長3ミリと小さすぎて、注射そのものが困難だ。その点、カイコ幼虫は同じ昆虫であるが、ほどよい大きさで、注射は勿論のこと解剖も可能である。
実験動物としてのカイコ幼虫の特長はいろいろある。 グルコースを添加した人工餌を与えたカイコの血糖値は速やかに上昇し、その結果カイコは、成長阻害を引き起こした。哺乳動物の血糖値を低下させるヒトインスリン、及びAMPキナーゼ活性化作用を持つAICARは、グルコースにより高血糖となったカイコの血糖値を低下させると共に成長阻害を解除した。さらに、組織培養したカイコの脂肪体をヒトインスリンで処理すると、脂肪体細胞内の糖含量の上昇、及びAktのリン酸化の促進が見られた。PI3キナーゼの阻害剤であるワートマニンは、これらの反応を抑制した。したがって、カイコはインスリンシグナル伝達経路やAMPキナーゼの活性化を介した血糖値調節機構を有している。 グルコースを摂取したカイコの血液中には、メーラード反応の生成物である糖化タンパク質AGEsが蓄積していた。このAGEsの蓄積は、メーラード反応の阻害剤であるアミノグアニジンの投与により抑えられ、グルコースによるカイコの成長阻害も回復した。さらに、我々は、高血糖カイコモデルを用いて、漢方薬のジオウに含まれるガラクトースが血糖降下作用を示すことを見いだした。ガラクトースは、マウスの高血糖モデルにおいても血糖降下作用を示した。 これらの結果は、無脊椎動物であるカイコの高血糖モデルが糖尿病治療薬の探索に有用であることを示唆している。


尚、東京大学と弊社は今後共同で糖尿病治療薬の候補物質の探索を行う。

以上